膀胱がん

膀胱は球形をしており、伸び縮みすることで尿をためて排出する働きを持つ臓器です。
膀胱がんは、この膀胱の内側の粘膜から発生するがんで、進行するとともに膀胱の外側へと増殖します。
病理組織(手術や生検などで採取した組織を顕微鏡で精査したがんの種類)としては、尿路上皮がんが多く、「腎盂がん」や「尿管がん」に多い病理組織型になります。これは、腎盂~尿管~膀胱までが同じ組織で繋がっているためです。
日本では中~高齢男性に多いがんですが、女性にみられることがあり、近年罹患率、死亡率ともに増加傾向にあります。
膀胱がんは早期発見により治癒することが可能ながんですが、発見が遅れると死亡率が高まります。
当クリニックでは、膀胱がんの早期発見と再発予防に力を入れております。病院での膀胱がん術後の膀胱鏡検査フォローやCTでの再発チェックも可能です。再発した際にも迅速に提携先病院へ紹介いたしますので、お気軽にご相談ください。
膀胱がんの主な原因
- 喫煙(膀胱がん患者様の約半数以上に喫煙歴あり)
- 職業性曝露(化学薬品(染料、ゴム、皮革製造業など)に長年触れる仕事)
- 慢性的な膀胱炎(長期にわたる膀胱刺激が、がんの発生を引き起す可能性がある)
- そのほか糖尿病や肥満などの生活習慣病(発生リスクをあげる可能性がある)
症状とチェックリスト
症状 | 説明 | よく間違われる疾患 |
---|---|---|
血尿・ 尿潜血 |
最も多い初期症状です。 痛みのない血尿(無症候性血尿)が多く、腫瘍から血尿が発生したり消えたりするため見逃されることも多いです。 検診などで尿潜血が陽性と指摘され、発覚することもあります。 |
膀胱炎 |
頻尿 | トイレの回数が増える。夜中に何度も起きる。 | 膀胱炎、過活動膀胱 |
排尿時の痛み | 尿を出すときに痛みや違和感、しみるような感じがする。 | 膀胱炎(抗生剤が処方され続け発見が遅れることがあります) |
残尿感 | 尿をしたあともまだ残っているような感じがある。 がんが膀胱の出口を塞いだり動きを妨げたりする場合に生じます。 |
前立腺肥大症、前立腺がん、神経因性膀胱 |
腰痛・ 骨の痛み |
進行がんのサインです。 がんが進行してほかの臓器に転移した場合に現れることがあります。 |
骨の疾患 |
体重減少・ 疲労感 |
進行期にみられる全身症状です。 がんが全身に影響を及ぼすことで、体力が低下してきます。 |
風邪などのよくある体調不良 |
上記のうち、「血尿が一度でもあった」、「尿潜血が陽性と指摘された」に加えて、ほかに当てはまる症状がある方は、膀胱がんの可能性がありますので、早急に泌尿器科専門医の診察を受けてください。
膀胱がんの検査方法
- 尿検査(尿細胞診)
- 尿の中にがん細胞が出ていないかを調べる検査です。痛みはありません。
- 膀胱鏡検査
- 尿道に麻酔をしたあと、細くて柔らかいカメラ(内視鏡)を挿入し、膀胱の中を直接観察します。がんの有無を正確に調べることができます。★当クリニックで当日の検査が可能です。
- CT
- がんの広がりや転移を調べるために行います。膀胱がんの術後の経過観察など病院を受診せずにクリニックでのフォローが可能です。
膀胱がんの分類と治療

膀胱がんは、がんの広がりに応じて次のように分類されます。
※実際にはより細かい分類や治療法がありますが、ここではざっくりとまとめています。より詳しく知りたい方は院長へお気軽にご質問ください。
分類 | 説明 | 治療法 |
---|---|---|
筋層「非」浸潤性膀胱がん (NMIBC:Ta~T1) |
膀胱の表面(粘膜)にとどまっている状態 膀胱がん全体の75% 初期のがん |
TURBT(内視鏡手術) BCG |
筋層浸潤性膀胱がん (MIBC T2~T4a) |
膀胱の筋層~筋層の外まで進んでいる状態 膀胱がん全体の25% 進行したがん |
膀胱全摘術 抗がん剤動注療法などの温存療法 (大阪医科薬科大学など) |
転移性膀胱がん T4b |
他の臓器(リンパ節・肺・骨など)に広がった状態 さらに進行したがん |
抗がん剤 免疫チェックポイント阻害薬 |
膀胱がんに関するよくあるご質問
- 膀胱がんは内視鏡で手術したあとも再発しやすいですか?また予防方法はありますか?
- はい、再発率はリスク以下の表の通り、ほかの初期のがんと比べてとても高いです。TURBT手術後に、まず病理組織を調べ、膀胱がんの「悪性度=顔つきの悪さ」を調べます。そのほか腫瘍の数や大きさ、粘膜内腫瘍の有無などによってリスク分類をし、今後の再発リスクの予測や予防方法を考えます。当クリニックでは患者様と相談しながら、3~6ヶ月ごとに膀胱鏡検査をして早期発見に努めております。
リスク分類 | 特徴 | 術後再発率(5年以内) |
---|---|---|
低リスク | 単発、低悪性度、小さい(<3cm) | 約30%前後 |
中リスク | 多発・再発歴あり・3cm以上、中等度の悪性度 | 約30〜50% |
高リスク | 高悪性度、大きい腫瘍、多発、CIS(上皮内がん) | 約50〜70%以上 |
- 血尿が出たらすぐに検査すべきですか?
- はい、血尿は膀胱がんの最も典型的なサインです。出てきたり消えたりしますので大丈夫と思われる方がいますが、たとえ痛みがなくても一度でも血尿があれば、すぐに泌尿器科を受診しましょう。
- 膀胱鏡検査は痛いですか?
- 尿道内にゼリーを注入する局所麻酔を使いますので、強い痛みはほとんどありません。しかし、痛みは人それぞれですし、男性は尿道が長いため、女性に比べて痛みが強い場合があります。不安な場合は院長にご相談ください。
腎がん
腎がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状が現れず、検診などでたまたま見つかることが多いとされています。
腎がんの三大症状として、血尿、腹部の疼痛、腹部のしこりが挙げられていますが、これらが現れたときにはすでに腫瘍がある程度の大きさに進行していることが少なくありません。さらに、リンパ節や肺、肝臓、骨に転移している場合もあります。
腎がんを早期発見するためには、定期的に超音波検査やCT検査、尿検査などを受診することが重要です。
治療方法は転移の有無で決まり、外科療法、抗がん剤治療などを行います。手術が必要な際には、「ロボット手術(ダヴィンチ手術)」を行うことも可能です。
また早期に発見できれば、腎臓を丸々切除せずにがんの部分だけ取り除くという、「腎部分切除術」や「凍結療法」も可能です。
当クリニックで腎がんを発見した際には、速やかに提携先病院へご紹介いたします。
なお、腎がんに対する抗がん剤治療も進歩しており、免疫チェックポイント阻害薬などを用いた新しい治療法の開発が進んでいます。
当クリニックでは、腎がんの早期発見と再発の予防に力を入れております。
腎がんの手術後には、CTなどの画像検査による再発チェックも当クリニックで受けていただけます。
再発した際には、迅速に提携先病院へ紹介いたしますのでご安心ください。ぜひ泌尿器科専門医の院長にご相談ください。
症状とチェックリスト
- 血尿(痛みがないこともあります)
- 背中や腰の鈍い痛み
- お腹にしこりを感じる
- 親族に腎がんの方がいる(遺伝性)
- 理由のない体重減少や疲れやすさ
- 長期の透析治療を受けている
など
上記のうち、血尿がみられる方は特に要注意です。少しでも心当たりがある方は早めにご相談ください。
腎がんに関するよくあるご質問
- 手術などの治療後も通院が必要ですか?
- はい、再発や転移の有無を確認するため、定期的なCT検査が必要です。腎がんはほかのがんと比較して進行が遅く、手術後10年以上経過してからの再発・転移も多く報告されています。当クリニックでは腎がんのフォローに欠かせないCT検査が可能です。ぜひ泌尿器科専門医の院長にご相談ください。
- 手術で腎臓を1つ取っても大丈夫ですか?
- 腎臓は2個ありますので、残った腎臓の機能が正常であれば、普段通りの生活が可能です。しかし、腎臓が1つになった場合、将来の腎不全のリスクは上がるため、慎重な腎機能のフォローと腎臓を守る治療が必要です。
- 腎がんは片方の腎臓にできるのですか?
- はい、基本的には片方の腎臓にできますが、まれに両方にできることもあります。また、手術後に片側の腎臓に転移することもあります。
- 血尿が出たらすぐに腎がんですか?
- 血尿の原因は腎がんだけでなく、結石や膀胱炎、膀胱がん、腎盂がんなどさまざまです。血尿はがんの可能性もあるため、早めに泌尿器科を受診することが大切です。
- 予防法はありますか?
- 禁煙、肥満予防、高血圧のコントロールなどが重要です。
精巣がん
精巣がんは比較的めずらしい病気ですが、ほかの多くのがんと異なり、20歳代後半~30歳代の若年者男性に最も多くみられるがんです。
御高齢の方にもまれにみられ、院長も精巣がんと診断して手術をすると、実際には悪性リンパ腫だったという症例も経験しています。
主な症状は、痛みのない片側の精巣の腫れや硬さの変化ですが、進行するまで放置している患者様も少なくありません。しかし、精巣がんは比較的短期間で転移しやすいため、注意が必要です。
実際に、転移後によって腹部のしこりや腹痛、腰痛、息切れ、咳、血痰などの症状が現れ、それをきっかけに医療機関を受診し、精密検査の結果、精巣がんが見つかるというケースもあります。
治療では、精巣を速やかに摘除したあと、精巣がんの組織型や転移の有無などにより追加の治療を検討します。
当クリニックでは、精巣がんの早期発見と再発の予防に力を入れております。
精巣がん術後や抗がん剤治療後の腫瘍マーカー、CTでの再発チェックも当クリニックで可能です。
再発した際は迅速に提携先病院へご紹介いたしますのでご安心ください。ぜひ泌尿器科専門医の院長にご相談ください。
症状とチェックリスト
以下の項目に該当する方は、早急に泌尿器科を受診してください。
主な症状
- 【初期】陰嚢内の痛みのない精巣のできもの
- 【進行時】背部痛・咳・息切れ・リンパ節腫大
リスク因子
- 停留精巣(陰嚢に精巣が降りてこない)を幼少期に指摘された
- 家族歴(遺伝的要因)、染色体異常(Klinefelter症候群など)
- 既往歴(片側の精巣がんなど)
検査方法(いずれも当クリニックで可能です)
- ①超音波検査(エコー)
- 腫瘍の存在や性状の評価
- ②腫瘍マーカー採血
- AFP(αフェトプロテイン)、β-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、LDH
- ③CT
- がんが疑わしいと診断された場合に行う
肺・腹部・縦隔などの転移評価
- 手術後や抗がん剤治療後の経過観察には、②腫瘍マーカー、③CTを検査します。
精巣がんに関するよくあるご質問
- 精巣にしこりがあるのですが、すぐに受診すべきでしょうか?
- はい、無痛であってもしこりや腫大があれば早めに受診しましょう。早期に受診をすることで、手術のみで治療を終えられる可能性が高まります。痛みがある場合は、精巣上体炎や精巣炎の可能性もあるため、適切な診断が必要です。
- 精巣がんは治りますか?
- はい、特に早期発見での治療成績は非常に良好です。進行している場合でも、化学療法により治癒が期待できることもあります。
- 精子は残せますか?
- はい、抗がん剤の治療前に精子凍結保存が推奨されます。