生活習慣病について

当クリニックでは、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の治療に力を入れております。肥満症の方に対しては、生活習慣病予防のためのダイエットや運動指導、栄養指導なども積極的に行っております。当クリニックでは3大生活習慣病に効果のあるガイドラインを参考に、私見も交えて作成したオリジナルの生活習慣改善シートをお渡ししておりますのでご活用ください。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医である院長が治療を担当いたします。
※日本内分泌学会専門医とは
体の広い範囲に及ぶ臓器の内分泌代謝疾患を専門的に診察し治療する医師です。
対象疾患:糖尿病・甲状腺疾患・高血圧症・高脂血症・肥満症・副腎疾患・下垂体疾患・副甲状腺疾患 など
日本内分泌学会HP参照
高血圧
高血圧とは
心臓から血管へ向けて血液が送られる際に血管壁にかかる圧力のことを「血圧」といいます。その血圧が慢性的に高くなる病気が高血圧です。医療機関を受診したときに収縮期血圧(最高血圧)が140㎜Hg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90㎜Hg以上、あるいはご自宅でリラックスした状態で測った5~7日の平均値の血圧(家庭血圧)が135/85mmHg以上の数値を示している場合に血圧と診断されます。ほかには睡眠時無呼吸症侯群やNSAIDsなどのお薬によるもの、原発性アルドステロン症という副腎疾患など、比較的若い方に発症する二次性高血圧がありますので、高血圧が疑われる場合には適宜検査をします。
高血圧を放置すると起こりうる病気
高血圧になっても、初期の段階では目立った自覚症状がほとんど現れません。そのため多くは放置状態となるわけですが、そうすると血圧に負荷がかかり動脈硬化が起きるようになります。さらに血管が狭くなると、脳梗塞や脳出血、狭心症、心筋梗塞、慢性腎臓病などの重篤な合併症を引き起こすようになります。
治療と血圧の目標
このような病気を起こさないためには、ご自宅でも朝(排尿後・朝のお薬を飲む前)、夕(就寝前)の2回定期的に血圧を測定し、高いと感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。治療としては、まずは1日20分前後のウォーキングなどの有酸素運動、1日6g以下の食塩制限(お味噌汁やラーメンのスープを飲まない、減塩の醤油を使う、塩をかける代わりにコショウや七味などの調味料を使うなど)、野菜・果物・魚を積極的に食べる、節酒・禁煙を始めるなどの生活習慣の改善を行います。高血圧治療における生活習慣の改善は、糖尿病や脂質異常症などの病気の治療にもほぼ共通しています。これらの食習慣は院長も実践していますので、一緒にお話をしながら頑張りましょうね。またそれでも改善がない場合はお薬での治療となります。できる限り患者様の負担が少なく効果が高いお薬を提案させていただきますので相談しながら決めていきましょう。
血圧の目標値は下記の図の通りです。血圧は「万病の元」です。目標を達成し健康な生活を送れるように二人三脚で頑張りましょう。
降圧目標
診察室血圧 (mmHg) |
家庭血圧 (mmHg) |
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<130/80 | <125/75 |
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<140/90 | <135/85 |
参照:高血圧治療ガイドライン2019 P.52
糖尿病
2型糖尿病とは
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンという血糖を正常に保つためのホルモンが、内臓脂肪の蓄積などによって効きにくくなる(インスリン抵抗性)ことや、インスリンの分泌量そのものが減ってしまうことによって、血糖値が高くなる生活習慣病の一つです。原因は遺伝や肥満、加齢などです。
糖尿病を放置すると起こりうる病気
初期段階では自覚症状が現れないため、医療機関を受診せずに放置されている患者様も多くいらっしゃいます。しかし血糖値が高い状態が続くと、体の細い血管や神経が傷つき様々な病気を引き起すため定期的な検査が必要です。特に失明原因となる糖尿病網膜症、人工透析のリスクが高まる糖尿病腎症、足などの切断などにもつながりかねない糖尿病神経障害は、糖尿病の三大合併症と呼ばれます。同時に、糖尿病は動脈硬化により心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患のリスクを高めます。
また慢性炎症やインスリン抵抗性によりがんの発症リスクが上昇し、がん細胞の増殖を促すインスリン様成長因子(IGF-1)の活性が高まることで、がんの転移が起こりやすくなります。具体的には、大腸がん・膵臓がん・肝臓がん・乳がん・子宮内膜がんの発がんリスクを増大させることが報告されています。
糖尿病の治療と治療目標
上記の合併症のリスクを減らすためには、早い時期から以下のような治療を開始することが重要です。
生活習慣の改善
運動療法には、1日20分程度のウォーキングなどの有酸素運動に加え、合併症の有無によっては制限が必要な場合もありますが、筋力トレーニングも有効とされています。
次に食事療法については、三食バランスよく食事を摂る、間食をしない、炭水化物を抜かない、食物繊維をしっかり摂るなどのポイントがあります。無理をせずに少しずつ食事を見直してみましょう。当クリニックではガイドラインを参考に、私見も交えて作成したオリジナルの生活習慣改善シートをお渡ししておりますのでぜひご活用ください。
薬物療法
糖尿病と診断された後は、インスリン抵抗改善を促すビグアナイド薬、尿中への糖排泄を促すSGLT2阻害剤、インスリン分泌を促したり調整したりするGLP-1受容体作動薬やDPP4阻害薬などの内服薬(一部注射薬)を主に使用します。腎機能や肥満の有無、脳心血管病の既往があるかどうかなどを総合的に判断したうえで、薬剤を選し、検査結果を確認しながらお薬を調整します。これらのお薬を3剤以上組み合わせても血糖コントロールが難しい場合や、インスリンが欠乏している方、血糖値が著しく高い方には、インスリン注射製剤が適応となります。インスリン導入や血糖コントロールが困難な方は、提携先の糖尿病内科をご紹介いたします。
治療目標としては、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する指標)を、高齢者や認知症のある方では8.0%以下、それ以外の方では7.0%以下に保つことを目安とします。大切なのは低血糖を起こさないように適切に血糖コントロールを行うことです。ほかの生活習慣病と同様に糖尿病も「万病の元」です。糖尿病の治療はお薬の調整も大事ですが、同じくらい生活習慣の改善もとても大切です。当クリニックのダイエット治療についてもぜひHPで参照ください。
脂質異常症
脂質異常症とは
血液中には様々な脂質が含まれています。このうち、LDL(悪玉)コレステロールやTG(中性脂肪)が過多、もしくはHDL(善玉)コレステロールが低い場合は、脂質異常症と診断されます。具体的には、空腹時採血による血液検査で、LDLコレステロール値が140㎎/dl以上(高LDLコレステロール血症)、中性脂肪が150㎎/dl以上(高トリグリセライド(中性脂肪)血症)、HDLコレステロール値が40㎎/dl未満(低HDLコレステロール血症)の場合に診断されます。原因としては、遺伝(家族性高コレステロール血症)や食生活の乱れ、運動不足、肥満、喫煙、糖尿病、甲状腺機能低下症などが挙げられます。
脂質異常症を放置すると起こりうる病気
脂質異常症には上記のように3つのタイプ(高LDLコレステロール血症・高トリグリセライド(中性脂肪)血症・低HDLコレステロール血症)があります。いずれの場合でも自覚症状はほとんど現れませんが、放置すると血管の動脈硬化(アテローム動脈硬化)が起こり、ある日突然脳卒中や虚血性心疾患といった重篤な合併症を発症することもあるので注意が必要です。
脂質異常症の治療と治療目標
生活習慣の改善
糖尿病、高血圧と同様に早期の生活習慣の改善と薬物療法が基本となります。
運動は1日20分以上の有酸素運動や筋トレが有効です。たとえばスーパーまで徒歩で行き、店内を1周で終わらせずに2〜3周歩いてみるなど、生活の中に取り入れてみましょう。
食事は以下のように、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の摂取を控え、不飽和脂肪酸・食物繊維を摂取するように心がけましょう。また中性脂肪は、糖分の過剰摂取やアルコールが原因ともなりますので注意が必要です。
控えるもの
- 飽和脂肪酸
- 動物性脂肪(霜降りの牛肉などの脂身、豚のバラ肉などの脂身、鶏皮など)、卵黄
ラード、バター など - トランス脂肪酸
- 唐揚げなどの揚げ物、マーガリン、洋菓子 など
積極的に摂取するもの
- 不飽和脂肪酸
- オリーブオイル、アボカド、ナッツ、大豆、海藻類
サーモン、マグロ、さば、いわし など
薬物療法
高コレステロール血症にはスタチンや小腸コレステロールトランスポーター阻害剤を、高TG血症にはフィブラート剤を使用します。不飽和脂肪酸内服の保険薬剤もありますので、気になる方はご相談ください。生活習慣の改善と薬剤を組み合わせて、まずは正常値を目指していきましょう。
高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症は、血液中における尿酸の濃度が高くなってしまう病気です。具体的には、血中の尿酸値が7.0mg/dlを超えているときに診断されます。ほかの多くの生活習慣病と同様、初期に自覚症状はほとんどありません。しかし、放置していると足の親指などに尿酸塩の結晶が蓄積してしまい、痛風発作が起こります。好発年齢は50歳代で男性に多く発症します。
放置しておくと尿路結石や腎機能障害、ほかの生活習慣病と同様に動脈硬化症を引き起します。尿酸による尿路結石はレントゲンでは写らないため、診断にはCT撮影が必要となります。当クリニックでは当日のCT検査が可能ですのでご相談ください。治療としては、食事指導や運動療法を中心に、まずは数値改善を目指し薬物療法を併用することもあります。
食品中のプリン体含有量(100gあたり)
- 極めて多い
(300mg~) - 鶏レバー、干物(マイワシ)、白子(イサキ、ふぐ、たら)、あんこう(肝酒蒸し)、太刀魚、健康食品(DNA/RNA、ビール酵母、クロレラ、スピルリナ、ローヤルゼリー) など
- 多い
(200~300mg) - 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、オキアミ、干物(マアジ、サンマ) など
- 中程度
(100~200mg) - 肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位や魚類 など
たらこ(焼き)、ブロッコリースプラウト - 少ない
(50~100mg) - 肉類の一部(豚・牛・羊)、魚類一部、加工肉類など
ほうれんそう(茹で)、カリフラワー - 極めて少ない
(~50mg) - 野菜類全般、米などの穀類、うどん・そば、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐、加工食品 など
参照:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
運動指導 筋力トレーニング
筋肉量の減少がもたらすデメリット
現在日本で大きな健康問題となっているのが肥満症などの生活習慣病に加えて体が虚弱となるフレイル、筋肉量の低下によるサルコペニアです。筋肉量は20代をピークに1年で1%減少するとされています。つまり20代を100%とすれば、50代では30%減、70代では50%減の計算となります。サルコペニアが進行すると、移動能力が低下するロコモティブシンドロームとなり、さらに筋力が低下するなど悪循環に陥ります。その予防において大事な運動習慣が、適切な栄養摂取と筋力トレーニング(筋トレ)です。
筋肉の重要性
筋肉は、歩行や日常生活の動作、姿勢の改善に重要な役割を果たすだけでなく、運動によって筋肉から分泌される「善玉マイオカイン」と呼ばれる物質が、生活習慣病やがんの予防にも関与していることが、近年の研究で明らかになってきています。
マイオカインには30種類以上が確認されており、代表的なものとしては以下のようなものがあります。
- マイオカイン
- 予防効果がある病気
- イリシン
- 糖尿病・高血圧などの生活習慣病、肥満症、認知症、骨粗鬆症
- SPARC
- がん細胞のアポトーシス(細胞死)、特に大腸がん
- マイオネクチン
- 心筋梗塞、お肌のシミやしわの予防
当クリニックのトレーニング指導
筋力トレーニングには生活習慣病の治療だけでなく、頻尿や尿漏れなどの泌尿器科症状を改善させる効果も期待できます。当クリニックでは、トレーニング室を設け、生活習慣病、フレイル、サルコペニア予防や排尿障害に対してトレーニング指導を行っております。また、当院に通院中の患者さまに限り、診察時間中トレーニングルームを無料で開放し、患者様に使用いただけるようにしています。
トレーニング室を使用できる方の条件は以下の通りです。
当クリニックに通院中の方で、
- 生活習慣病、サルコペニア、肥満症、メタボリックシンドロームの患者様
- 排尿障害、更年期障害の患者様
- がんと診断された患者様
トレーニング室ご利用にあたっての注意事項
当クリニックのトレーニング室(筋力トレーニング機器を含む)をご利用の際は、以下の注意事項をよくお読みいただき、安全にご利用いただきますようお願いいたします。
ご利用に際してのお願い
- 医師の許可を得た方のみご利用いただけます。
- トレーニング前後には準備運動・整理運動を行い、無理のない範囲で運動してください。
- トレーニング機器の使い方がご不明な点がある場合は、必ずスタッフにお尋ねください。
- 自己判断での過度な運動や体調不良時の無理なご利用はお控えください。
- 高齢者や疾患のある方は、定期的に医師の指示を受けながら運動内容を調整してください。
禁止事項
- 飲酒後の利用
- 土足や不適切な服装での利用(室内用運動靴をご着用ください)
- 携帯電話を操作しながらの運動
- ほかのご利用者様への迷惑行為や危険行為
免責事項
- トレーニング中の転倒やけが等の事故に関しましては、当クリニックでは一切の責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。
- ご自身の体調や持病に合わせて、適切な運動量・内容をお守りください。
- 万が一の事故や急病の際には、速やかにスタッフにお知らせください。近隣の整形外科などに紹介受診が可能です。

骨盤底筋トレーニングについて
尿漏れを防ぐためには、骨盤底筋をきちんと意識することが大切です。もっとも骨盤底筋と言われても、ピンとこない方も多いと思いますのでわかりやすく解説いたします。まずは、トイレの排尿時に、尿を止められるかどうかを確認してください。途中で放尿を止められない場合、骨盤底筋がうまく機能していないと考えられます。
そのようなときは、骨盤底筋トレーニングを取り入れます。ご自身にとって楽な姿勢をとっていただき、その姿勢で息を吐きながら骨盤底筋だけを収縮させます。一般的には、ある一定の時間、骨盤底筋を収縮させ、その後は数秒間のインターバルを挟み、再び収縮させます。ただしより効果的な運動プログラムは患者様によって異なるため、当クリニックを来院された際に、直接患者様にご説明させていただきます。このトレーニングを何度も繰り返すことにより、段々と尿漏れが解消していきます。